第8部 外部知識とツールでLLMを拡張する
第34章マルチモーダルAI
本サイトはLLMを中心に扱ってきましたが、AIが扱えるのは言葉だけではありません。画像や音声を扱うAIも 急速に発展しています。第8部の締めくくりとして、テキスト以外を扱うマルチモーダルAIを、全体像の中で 位置づけておきます。ここまで学んだ考え方が、言葉以外にも応用できることが見えてきます。
34.1テキスト以外を扱うAI
テキストだけでなく、画像や音声など複数の種類の情報を扱うAIを、マルチモーダルAIと呼びます。扱う情報の種類が広がっただけで、土台の考え方は共通です。
これまで見てきたLLMは、言葉(テキスト)を扱うAIでした。しかし、AIが扱えるのは言葉だけではありません。 画像、音声、動画など、複数の種類の情報を扱えるAIを、マルチモーダルAIと呼びます。「モーダル」とは 情報の種類のことで、複数の種類を扱うので「マルチ(多い)モーダル」です。
扱う情報が変わっても、第12章で見た「情報を数値に変換して扱う」という考え方や、ディープラーニングという 土台は共通しています。言葉をトークンとベクトルにしたように、画像や音声も数値に変換して扱います。 対象は違っても、根っこのしくみは同じ。だからこそ、LLMで学んだ考え方が、画像や音声を扱うAIの理解にも 役立つのです。
34.2画像生成のしくみの概要
画像生成AIは、文章による指示から画像を作り出します。多くは、乱れた状態から少しずつ整えていくことで、指示に沿った画像を生成します。
画像生成AIは、「こんな画像がほしい」という文章の指示から、画像を作り出します。代表的な方式では、 最初に砂嵐のような乱れた状態から始め、指示に沿うように少しずつ整えていくことで、最終的な画像を 生み出します。ぼんやりした状態から、だんだんくっきりした絵が浮かび上がってくる、というイメージです。
第2章で見たとおり、これも新しいデータを作り出す生成AIの一種で、扱う対象が言葉ではなく画像である点が 異なります。LLMが次の言葉を予測して文章を作るのに対し、画像生成AIは別のしくみで画像を作りますが、 大量のデータから学ぶという点は同じです。文章と画像を対応づけた大量のデータから、「この言葉には、 こういう見た目が対応する」という関係を学んでいるのです。
34.3音声の生成と認識
音声を扱うAIには、文章から自然な音声を作る生成と、話し声を文章に変換する認識があります。どちらも身近なサービスで使われています。
音声を扱うAIには、大きく二つの方向があります。一つは音声の生成で、文章から自然な話し声を作り出します。 読み上げのサービスや、機械が案内を話すしくみに使われています。もう一つは音声の認識で、話し声を文章へ 変換します。話した言葉が文字になる文字起こしや、音声での操作に使われています。
これらは単独でも役立ちますが、組み合わせると、さらに使い道が広がります。音声認識で話し声をテキストに し、それをLLMで処理して、結果を音声生成で読み上げる。この三つをつなげば、話しかけると声で答えてくれる しくみができます。それぞれは別のAIですが、テキストを介してつなげられるのです。ここでも、言葉(テキスト)が さまざまなAIをつなぐ共通の土台として働いています。
34.4マルチモーダルLLMへの広がり
近年は、言葉だけでなく画像なども一緒に扱えるLLMが広がっています。文章と画像を合わせて理解し、応答できるようになりつつあります。
近年は、LLMそのものが言葉以外も扱えるように広がってきています。文章に加えて画像も入力として受け取り、 両方を踏まえて応答できるLLMが登場しています。たとえば、写真を見せて「これは何か」「どこがおかしいか」を 尋ねる、といった使い方です。言葉を中心にしつつ、扱える情報の種類が広がることで、LLMの応用範囲はさらに 広がっています。
深掘り:異なる種類の情報を同じ土俵に載せる(読み飛ばし可)
言葉も画像も一緒に扱えるのには、からくりがあります。鍵は、第12章で見たベクトルの考え方です。言葉を ベクトルにできたように、画像もベクトルに変換できます。そして、言葉と画像を、意味の近いものどうしが 近くに来るように、同じベクトルの空間へ対応づけて学習させます。すると、「犬」という言葉のベクトルと、 犬が写った画像のベクトルが近くに配置される、といったことが起こります。異なる種類の情報を、同じ ものさし(ベクトル空間)の上に載せてしまう。この発想が、マルチモーダルを支えています。言葉で学んだ 「意味を位置として表す」という考え方が、ここでも中心にあるわけです。
第8部では、RAG、ツール利用、エージェント、そしてマルチモーダルと、LLMの力を広げる方法を見てきました。 最後の第9部では、これらを実務で使ううえで避けて通れない、活用の実際と、セキュリティや倫理の観点を 整理します。
この章の要点
- 画像や音声など複数の種類の情報を扱うAIを、マルチモーダルAIと呼びます。土台の考え方は共通です。
- 画像生成AIは、文章の指示から、乱れた状態を少しずつ整えるなどして画像を作り出します。
- 音声を扱うAIには生成と認識があり、テキストを介してLLMとつなげられます。
- 近年は画像なども一緒に扱えるLLMが広がり、その土台には「意味をベクトルで表す」考え方があります。